【第114回 2018.05.18】

文科系と理科系

投稿者:井上政義(昭和39年  文理学部 理学科 物理専攻 卒)

 私は昭和35年に大分県立中津南高等学校を卒業し、静岡大学の文理学部に入学しました。文理学部は旧制静岡高等学校の跡地にあり寮もそのままでした。受験の時にその仰秀寮に泊まり、入学時も取り敢えず荷物を寮に送り入寮選考を受けました。何回か選考に落ちたが、そのうち選考委員と知り合いになり、入寮することができました。

 寮での生活は2年間でしたが、当時は安保闘争の真っ只中で同僚や先輩との密度の高い討論・行動で鍛えられました。この時の経験がその後の私の人生に大いに活かされてきたと思っています。

 理科の1・2年生なのに文科の先輩の話を聞き、訳も分からずマルクスの「資本論」やケインズの「雇用・利子および貨幣の一般理論」を買いました。この本は今も本棚にあります。

 卒業して九大の大学院に進み、物理学を専攻しました。下宿は仰秀寮の1年先輩の文理・法科の佐藤久さん(元:静岡の弁護士会長)をたより、隣の部屋に決めました。

 大学院を修了して鹿児島大学理学部に就職したら、教養部に仰秀寮の4年先輩の木下威さん(後に、三重大学教授)がいました。また、理学部には数学と地学に静大の後輩が就任してきました。学部長をしている時に大学が国立大学法人化されて大変な苦労をしました。今は工学部の非常勤講師をしています。

 研究分野は統計物理学(カオス・複雑系)で、最近は非定常時系列の解析方法を開発して、物理と経済の融合領域の論文(リーマン・シヨックの規模と震度)を教え子の石崎龍二さんと書き、ヨーロッパの学術誌であるELSEVIEAのPhysica Aに2つ掲載(490(2018)967;392(2013)3344)されました。

 蒸気機関と鉄道によって産業革命が起きましたが、最近はコンピュータとネットによる金融革命(仮想通貨、ブロック・チエーン技術、高速ロボトレーダー)によって経済が転換しています。日本の経済は「流動性の罠」に陥っており、これからは、文科と理科の融合した高度な知識・技術がないと過酷な世界のなかで日本は立ち行かないのではと考えています。

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