【第25回 2012.07.17】

還暦を目前にして

投稿者:河本 通正 (昭和55年卒 人文学部 経済学科12回)

私は今年56歳。職業は税理士で、会計事務所を経営する自営業者である。妻は同級生で、公務員をしている。公務員の定年は60歳で、あと4年で妻は定年を迎える。なにやら指折り数えて楽しみにしている風である。今まで考えもしなかったが、世間的には大部分の人達は就職をし、やがて一定期間をもって強制的に仕事を取り上げられる。勤め人の方と会話すると、意味不明に羨ましがられる。「自営業は良いですね。定年がなくて」と。すぐさま切り返す。「そうですかねぇ、逆に定年が有る方が計画が立てやすくて良いんじゃないですか。自分で引き際を決めるのはなかなか難しいですよ」と。大抵結論は出ずにお互いを羨ましがって話は終わる。同じように多くに経営者が『その時』を迎えるのに苦慮している。自分ではまだまだ若い、若い者に任せておけない、と思いたい。第一線から退くのは、すなわち死を意味する位の事と考えている。ご意見番の立場に退くのは、はたから見る程楽な決断ではないのだ。かと言って、知らずの内に老害を振りまくことは断じてしたくない。その狭間で経営者の心は揺れ動いている。そういう現実を考えれば、定年があるということは一つの重大なストレスから解放されていると言える。だから私は勤め人の方が羨ましく思えるのである。まぁ、ないものねだりしても仕方ないので、とりあえずは借金を返済し終えるまで頑張るしかない。それから考えても遅くはないだろう。それまでに趣味の一つでも探さないと、と思うこの頃である。


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