【第95回 2016.10.14】

附属各校・園の実践記録は宝の山

投稿者:杉田 義則(昭和43年 教育学部 小学校教員養成課程 卒)

 私の手元に「生活教育の実践」というガリ版刷りの本があります。昭和24年に静岡大学静岡第一師範学校附属静岡小学校から発行されたものです。これは、私が附属静岡小学校へ異動が決まった時、当時の校長先生から頂いたものです。
 学校教育とカリキュラムについて述べた理論編と各学年の指導計画から構成されています。いずれも、戦後の新教育に意欲的に取り組もうとする附属校の先生方の情熱が伝わってくる貴重な一冊です。
 そして、この生活教育の集大成として、昭和32年に十年間にわたる研究記録「登呂の子ども」が発行されました。教育研究書に見られがちな堅苦しさがなく、理論とそれにそった実践の繰り返しの中から得られた生きた子どもの姿とその指導に取り組む教師の苦悩と喜びが平易な表現でまとめられていて楽しく読める一冊です。

 

 指導要領が改訂されるたびに、学校現場は内容の判然としない「スローガン?」に振り回されてきたように思います。
 「ゆとりと充実」、「新学力観」、「生きる力」、「心の教育」しかりです。さしずめ今回の改訂の目玉は主体的・能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」の導入ということになるかと思います。実は、このアクティブ・ラーニングの考えを先取りしたような実践が附属校・園には沢山あります。豊富な実践に裏打ちされた研究図書が沢山あります。
 アクティブ・ラーニングについての講演や研修会が各地で開かれていますが、学校現場の戸惑いは依然続いていると聞きます。実践の裏打ちのないスローガンは砂上の楼閣のようなものであり、説得力がありません。

  

 この学校現場の戸惑いを解決するために、今こそ、附属各校・園の出番ではないでしょうか。附属各校・園の研究実践記録は宝の山です。時には過去の実践記録にも目を通し、広く情報を提供し静岡県の学校教育をリードしてもらいたいと思います。前述した「登呂の子ども」は、10年間の実践をまとめたもので、その間校長は三代、教官は八割近く交替したと言いますがその研究意欲と業績とは後任者に継承推進されて結実したのです。附属各校・園はそれが出来るところだと思います。期待しています。

 

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