平成29年度静岡大学学位記授与式(静岡地区)を挙行しました

2018/03/23
ニュース

 平成30年3月23日に平成29年度静岡大学学位記授与式(静岡地区)がグランシップを会場に行われ、学部学士課程卒業生1,221名、大学院修士課程修了生203名、大学院博士課程修了生13名、大学院専門職学位課程26名に学位記が授与されました。

 開式前には、静岡大学吹奏楽団により「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が演奏され、厳かな雰囲気の中での開式となりました。
 石井学長からは、「日本の社会の未来はまさに皆さんの双肩にかかっています。変化のなかで「生き残る」したたかさと社会を「変革」する勇気を併せ持って、前に進んで下さい。」との告辞がありました。
 また、本学農学部を卒業し、農学研究科を修了後、平成23年3月に本学博士課程の創造科学技術大学院を修了され、現在、日野自動車株式会社において、材料開発の業務に当たっておられる 杉浦 立樹 さんから卒業生へのはなむけの言葉として、心温まる先輩講話をいただきました。
 学業成績が優秀な卒業生(人文社会科学部 佐藤 由来香 さん、教育学部 室伏 ほのみ さん、理学部 福永 沙希 さん、農学部 神戸 希望 さん)に対して表彰状と記念品が贈られました。
最後に、卒業生・修了生を代表して教育学部 室伏 ほのみ さんから、学長をはじめとする教員等に対する謝辞がありました。

 学び舎の静岡大学を忘れず、これからの人生をしなやかに、精一杯生きていってほしいと願い、みなさんの今後の活躍を期待しております。

 式典では、代表者へ学位記が授与されました。

式典では、代表者へ学位記が授与されました。

 学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告示がありました。

学長から卒業生・修了生に向けて、今後の活躍を期待し、告示がありました。

<平成29年度静岡大学卒業・修了者数(静岡地区)>

○学部(学士課程)
人文社会科学部     450名
人文学部        10名
教育学部        390名
理学部         211名
農学部         160名
計          1,221名

○大学院(修士課程)
人文社会科学研究科             31名
教育学研究科                37名
総合科学技術研究科             134名
理学研究科                  1名
計                     203名         

○大学院(博士課程)
教育学研究科      1名
自然科学系教育部    12名
計          13名

○大学院(専門職学位課程)
教育学研究科      24名
法務研究科       2名
計           26名

静岡地区合計    1,463名

成績優秀者に表彰状と記念品が贈られました

成績優秀者に表彰状と記念品が贈られました

卒業生・修了生を代表して教育学部 室伏 ほのみ さんから謝辞がありました。

卒業生・修了生を代表して教育学部 室伏 ほのみ さんから謝辞がありました。

<平成29年度静岡大学学位記授与式(静岡地区)学長告辞>

 ただ今、学部1,221名、大学院修士課程203名、大学院博士後期課程12名、専門職学位課程26名の方々に学位記を授与致しました。また、愛知教育大学との共同大学院として教育学博士の学位を1名に授与致しました。
 昨日の浜松キャンパスでの卒業・修了を合わせると、学部1,907名、大学院修士課程554名、大学院博士後期課程28名、論文博士1名、専門職学位課程26名の合計で、2,516名に、学位記を授与いたしました。
 卒業生、修了生の皆さん、ご卒業おめでとうございます。ここに、静岡大学教職員を代表して、お祝いを申し上げます。卒業生・修了生の今日のこの日を心待ちにしてこられた、ご家族・保護者の皆様にも、心よりお祝い申し上げます。
 またご多忙にも関わらず、授与式にご臨席をたまわりましたご来賓の皆様には、厚く御礼申し上げます。

 さて、皆さんはこれからきわめて変化の激しい時代のなかで、それぞれが選択した道を歩むことになります。グローバルな人や物の移動はますます活発化しており、人工知能に象徴される情報技術の発展や自動車の動力の内燃機関から電気への移行、自動運転化の導入等が我々の仕事や暮らしの在り方を大きく変えていくであろうというという予測が様々な場で語られています。多くの自動車関連企業が立地するここ静岡の地においても、次世代の自動車の時代がいつ来るのか、またそれはどのような形のものになるのかに大きな関心が集まっています。
 しかし過去を振り返れば、イノベーションや経済のグローバル化が我々の社会大きく変えてきた時代は決して珍しくはありません。例えば18世紀から19世紀にかけての英国は、綿織物産業を中心とする産業革命を経験しました。それまで手作業であった糸をつむぎ、布を織る作業が自動紡績機、自動織機の発明によって機械化され、これと共に製鉄や蒸気機関といった関連分野の産業も急速に発展しました。また大量に生産された綿織物をはじめとする生産物はインドを中心とする植民地に対する帝国主義的な支配と結びつき、国境を越えて販路を広げることになりました。
 このような綿織物産業の急速な機械化は、当然のことですが伝統的な綿織物職人の仕事を奪い、彼/彼女たちを不安に陥れました。このような職人たちの不安と反発が形となって現れたのが、19世紀のはじめに起こったネッド・ラッドなる架空の神話的人物を頭に掲げるラッダイト運動と呼ばれる機械打ち壊し運動でした。また綿織物の主な輸出先となり、現地の伝統的な綿織物産業が大転換を求められることになったインドにおいても、植民地支配の強化に対する怒りと結びついて、民衆の間で19世紀半ばの「インド大反乱」に象徴される反英国の大きな社会運動のうねりが生じることになりました。
 これらの運動はその後、当初の反機械、反支配という単純なスローガンから労働者の権利や民族自決権といった基本的人権を擁護する運動へと発展をとげ、イノベーションやグローバル化そのものを否定するのではなく、それらがもたらす果実をより多くの人々のものとし、社会全体を豊かにすることをめざすものとなりました。そしてその後も激しい労働争議や大きな戦争などの紆余曲折は多々あったとはいえ、これらの運動を通じて、我々は大局的にはこの産業革命以降の数々のイノベーションがもたらした膨大な富を分かち合い、多くの人々の生活の向上につなげることに成功してきました。
 しかし残念ながら、とりわけ1980年代以降、情報分野を代表とするイノベーションによって生み出された新たな富の行方については、その分配の極端な不平等がしばしば指摘されています。例えば今年2月のダボス会議の直前に、世界の貧困に苦しむ人々の支援に取組んでいる国際協力団体オックスファムが公表した報告書によれば、世界で最も豊かな8人が世界の貧しい半分の36億人に匹敵する資産を有しているとのことです。またより長期的な歴史的展望の下でのこのような格差拡大の客観的背景についても2014年に出版され世界的なベストセラーとなったフランスの経済学者トマ・ピケティの『21世紀の資本』がきわめて説得的な議論を展開しました。資本収益率は常に経済成長率を上回るのであるから、資産を持つ者と持たない者の間の不平等を正すためには所得に対する累進課税や相続税をはじめとする財産税の強化によって富裕層への富の集中を防ぐ政策的介入が必要であるという彼の主張は多くの人々から共感を得ています。今我々が直面しているイノベーションやグローバル化への大きな流れのなかで生み出されるはずの豊かな富も、かつての労働運動や民族独立運動のような時代の変化に伴うネガティブな側面を正そうとする意識的な努力抜きにただ座して見ているだけでは、広く世界中の人々に恩恵をもたらすことにはならないでしょう。
 これから社会に出ようとしている若い皆さんにとって、時代の一歩先を見ることによって今後の社会の激しい変化を予測し、求められる新たな能力を積極的に身につけることによって絶えず自分自身の成長を図ることは極めて重要です。時代に「順応」し、「適応」して皆さん自身が、あるいは皆さんが今後所属する組織が「生き残り」を目指すのは当然のことです。しかしそれと同時にこの社会がすべての人々に取って暮らしやすく、生き甲斐のあるものとなるように、イノベーションやグローバル化が失業や格差拡大を生み出すのではなく、新たな仕事を与え、国境を越えた多様性に満ちた人と人とのつながりを作っていくことができるようにすることもそれ以上に重視されなければなりません。
 ところが現実にはこれとは反対に、現在世界中で自国中心主義や排外的な民族主義、核兵器をはじめとする大量破壊兵器による威嚇、人権侵害や独裁といった様々な形をとって、社会的、政治的対立を「暴力」によって解決しようとする動きが広がっています。このような動きの背景には、先のアメリカ大統領選挙でトランプ氏を熱狂的に支持した人々のようなイノベーションやグローバル化によって自分たちの生活が破壊されてきたとしか感じることのできない人々の大きな不満があります。このような広く共有された不満を放置したままでは、豊かで安定した世界、そしてそのなかでの日本社会の繁栄を実現することは不可能だと考えます。過去の労働運動や民族独立運動をまねる必要はまったくありませんが、かつて様々な社会運動を担ってきた理想に満ちた若者たち同様、皆さんが自由で公正で友愛に満ちた社会の建設をめざして、社会の不正を「正し」、社会を「変革する」気概をもつことは、絶対に必要です。
 日本の社会の未来はまさに皆さんの双肩にかかっています。変化のなかで「生き残る」したたかさと社会を「変革」する勇気を併せ持って、前に進んで下さい。最後になりますが、今日ご卒業されるすべての卒業生・修了生の皆さんの今後のますますのご活躍を心より祈念して、私からのご挨拶と致します。

2018年 3月23日
静岡大学長 石井 潔

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